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ドワーフとタンポポ

君 の 腕 に 噛み 跡 つけ た あと

夢を見た。 多分、夢だったと思う。 「君の絆を僕にちょうだいね」 枕元で少年が囁く。 声に聞き覚えはない。 あの不思議な格好は宇宙服だろうか。 ニュース映像で見たことがある。 目が覚めると、世界は茫漠とした闇だった。 そうだ。 これが、今、俺の住む世界だ。 だから、あれは過去の記憶だというのでなきゃ、夢なんだ。 総合病院の渡り廊下。 カツ、カツ、という小さな音が聞こえて来た。 清掃係の女性がモップの手を止める。 年の頃は初老。 名前は、史子(ふみこ)さん。 腰を一つ叩いて伸ばし、目の前を行き過ぎる男性へと和やかな声をかける。 「こんにちは。 暮木(くれき)さん」 しかし、返事はない。 男性に付き添う看護士が驚き、気まずげな視線を投げてきた。 「いいよ、いいよ」 史子さんは笑い、行ってと促す。 暮木のつく杖は白い。 だからこそ視覚以外は鋭敏で、いつもならば声を聞き分けて歩み寄ってくれる。 史子さんにだけは。 なのに、今日はどうしてしまったのか。 曖昧な顔付きで顎を引いただけだった。 その姿は、彼がここに入院した直後を思い起こさせる。 道を断たれた者の静かな拒絶。 エレベーターに乗り込む背を見送って、ひっそりとため息をついた。 (「なんだろうねえ。 私ときたら」) 寂しいのだ。 ずいぶん前に息子に先立たれて、彼に面影を重ねていたに違いない。 自分だけという優越感もあった。 (「患者さんに甘えちゃあ、いけないね」) 自らに言い聞かせて背を向ける。 今、暮木の頭の上には、卵が一つ乗っている。 しかし、それは目に見えない。 紫と黒の不気味な卵だった。 「視力を失った男性の名は、暮木・希生(くれき・のぞみ)。 航空機パイロット志望の21歳、大学生。 頭の上に乗っているものは、ベヘリタスの卵」 石切・峻(高校生エクスブレイン・dn0153)は、そう切り出した。 絆のベヘリタス。 教室内で囁かれる名に頷き、続ける。 「もう、耳に届いていると思う。 絆のベヘリタスは強力なシャドウだ。 どうも、ヤツと関わりのある人物が、一般人から絆を奪って卵を産み付けているらしい。 これが次から次へとベヘリタスに孵化するのかと思うと眩暈がする」 眉間を押さえる。 「厄介な話だが、孵化した直後を狙えば条件によっては弱体化を期待できるかもしれない。 そこで、ベヘリタスがソウルボードに逃げ込む前に皆で撃破して欲しい。 お願いします」 頭を下げる峻。 「条件は、孵化する前に対象である暮木と縁を結んでおくこと。 卵は産みつけた相手の持つ絆を養分として育つらしい。 そして一週間後に新しい個体として孵化するが、宿主と絆で結ばれた相手に対しては攻撃力が減少し、かつ受けるダメージが増加してしまうという弱点を持っている」 よって、それを利用すれば灼滅も不可能ではなくなるだろう。 「暮木は入院中なので、起床から消灯までは院内のどこかで顔を合わせることができる。 が、相手はものが見えない。 視覚以外に訴えないと気付かないので気をつけて欲しい。 ちなみに史子さんだが」 峻は、人差し指を立てた。 「彼女には道具や中庭の花に話しかけてしまう癖がある。 君たちには無いか? そういうこと。 暮木はバケツと話している彼女に親しみを覚えたらしい」 見えないからこそ想像力を共有するのが嬉しかったのだろう。 「接触から孵化まではおよそ二日間の猶予がある。 病室、食堂、中庭、屋上などが彼の行動範囲だ。 移動中は付き添いがいるが、その他は大概一人でいる。 家族は滅多に顔を出さない」 治療費を工面するため。 それに対する遠慮も鬱屈の一つかもしれない。 「孵化は二日目の夕刻、無人の屋上で訪れる。 使用するサイキックはシャドウハンターと鋼糸に似たもの。 姿は仮面をつけた巨大な芋虫で、胸に閉じた一つの目がある。 これは少しずつ開き、全開になるのは戦闘開始10分後。 その時にはソウルボードを通じて逃走してしまうので注意して欲しい。 そうなると灼滅はかなわない」 峻は告げる。 「相手の戦闘力は非常に高い。 だから、事前の関係構築が重要だ。 これは友好な関係に限らない。 ただ、絆のベヘリタスを倒すと失われた関係は戻るので、その後のフォローも必要となる。 内容によっては難しいかもしれないが」 ともかくと続く声は硬い。 「無事に帰ってきてくれ。 それが俺の一番の願いだ。 どうか、よろしく頼みます」 こんにちは。 来野です。 目玉焼きトーストをじっと見る。 半熟が好きです。 そして、今回はシャドウです。 逃走されても成功ですが、ベヘリタス勢力が力を得てしまうかもしれません。 時間帯は夕刻。 天候は晴れ。 周囲は背の高い柵で囲まれていますので、落下の心配は少ないです。 また、一般人が上がってくることもありません。 屋上から逃がさなければ人払いは必要ないでしょう。 病院は大学付属病院くらいの規模で、暮木の病室は四人部屋です。 聴覚の他に嗅覚や触覚も鋭敏です。 それらで人を記憶します。 現在、史子さんのことは覚えていますが、親しかったことに関してはピンと来ない状況です。 ベヘリタスの卵は、ダークネスと灼滅者にのみ見えます。 一般人には見えません。 皆様のご参加、心よりお待ちしております。 病院の朝は早い。 白い扉を開けて、御納方・靱(茅野ノ雨・d23297)は室内へと頭を下げた。 「今日から職場体験でお世話になります。 掃除させてもらいますね」 上から下までしっかりと支度を整えた彼を疑う者はない。 「ゴミ箱君今日もご苦労様」 てきぱきと動き回る。 事前にゴミを用意して不自然な無音を作らないほどの手の込みようだ。 バイト生活のたまものか。 暮木は四つ並んだベッドの一番奥にいた。 邪魔をせず静かに座っている。 「使い込まれたものって愛着が湧くんですよね」 靱の照れくさげな声に顔を上げた。 史子さんへの態度と似ていたが、それとはまた別種の当惑も感じられる。 「病院の備品は……」 暮木はその先を口ごもる。 あまり話さないのだろう。 低く艶のない声だった。 周囲はまだ違和感に気付いていない。 その時、配膳ワゴンを押すカラカラという音が聞こえて来た。 他の患者は自ら食事を取りに行くが、見えない男にはそれが難しい。 そこへトレイを運んできたのは雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)だった。 「初めまして、本日から数日間職場体験でお世話になります」 体験者が二人揃ったことで信憑性が増し、若いのに感心だねえと目を細める患者もいる。 煌理はベッドテーブルへとトレイを置き、暮木へと声をかけた。 「食事と外出のサポートをさせていただきますが、何か至らぬところがあったらお申し付けください」 「ありがとう」 「あ……お一人で大丈夫ですか? なんなら手を……」 少しの逡巡を見せてから意を決し、暮木は出汁の匂いのする皿の縁に触れた。 「これ、何だろう」 そうして煌理の目を頼り、料理の内容を教えてもらってから箸を使う。 薬を届けに来た看護師が今日は残さなかったのねと珍しげな顔で笑った。 午後になると院内には病人以外の姿が増える。 それらをよそに中庭のベンチに腰を降ろしている暮木の前に、足音が一つ止まった。 「史子さん避けてるみたいだけどどーしたの、心配してたよ?」 降って来た声は聞く者に魅惑的な女の子のもの。 八絡・リコ(火眼幼虎の葬刃爪牙・d02738)だった。 「うん? 何を?」 負の心証すら薄い。 その様子を見てリコは今朝の事を思い返す。 史子さんに声をかけてみたのだった。 聞き出してきた馴れ初めを口にしても、暮木にはなぜその話題なのかがわからない。 思ったとおりだ。 「バケツのこととか覚えてる? 本当に何も思わなくなっちゃった?」 「覚えてはいるけれど、君は史子さんのご親戚か何か?」 リコは持参したクッキーの包みを差し出した。 「ううん、入院している人がいるから。 これ、クッキー。 お見舞いに作ってきたけどお医者さんに止められたんだ」 ドライフルーツやチョコレートと種類も様々なクッキーだ。 甘い香りが風に乗った。 「んー……きっと気分が沈んでるんだよ。 美味しいかはともかく、甘いもの。 ちょっとくらいなら気分転換にいいでしょ?」 「頂戴します」 ラブフェロモンの効果で暮木は嬉しげな笑顔を見せる。 手にしてその場を離れた。 廊下の先から少年の声が聞こえて来る。 和服に身を包んだ碓氷・炯(白羽衣・d11168)のものだ。 「お爺様に元気を分けてあげて下さいね」 しかし、そこには彼しかいない。 足を止めたのはまず看護師の方だった。 炯は恥じ入るように視線を落として道を空ける。 「全てのものに神様が宿っている、だから大切になさい、感謝なさいと小さい頃からお爺様によく言われましてね。 いつの間にか癖になってしまいました」 暮木はリアクションを見せない。 やはり喰われている。 それでもあきらめない。 「姿も見えない神様ですけれど、いつも見守って頂けているようで素敵ではありませんか」 暮木の肩先が微かに揺れた。 炯が包みを差し出すと、看護師が受け取って微笑む。 「あら和菓子。 上品ですね」 彼らしい見舞いの品だった。 自分がもらうべきものか。 暮木は悩み、しばらくは炯から漂う馥郁とした香りの中にいる。 その場を離れる時にやっと口を開いた。 「相手にだけ見えているのは怖くないか」 看護師が「お爺様お大事に」と頭を下げた。 暮木は廊下の端の長椅子に腰を降ろしていた。 歩み寄ったのはレイン・シタイヤマ(深紅祓いのフリードリヒ・d02763)。 「隣に座っても、大丈夫ですか」 暮木は頷き、心持ち片側へと寄って残り半分を空けた。 「お一人ですか」 「はい」 「私も、今は病室から追い出されてしまって。 家族水入らずだって」 家族。 光のない男の横顔が微かに動いた。 「従兄が入院しているんです。 お兄さんと同じくらいの年の」 レインの話しぶりは堂々たるものだが、そう口にした時は翳りが入り混じった。 だからといって悲嘆に暮れる様子は見せない。 あくまでもすっきりと語る。 そして、膝の上に置いた本の表紙を開いた。 ページを繰ると小さな鳥が羽ばたくようなパララという音が立つ。 「……本」 暮木が呟く。 「古典の、予言をする釜の出てくる話を読んでいました」 釜と呟いたきり、暮木はしばらく動かない。 眉根を絞って長いこと考え、それから彼女の方を向いた。 「ぶんぶく……は、違うか。 予言しない」 「雨月物語です」 「う」 疎い男の頭にも、彼女の興味のあり所は伝わったようだ。 お大事に。 その場を離れる時に暮木は言った。 どこの誰へと向けた言葉なのかは、レインのみが知る。 次の場所は中庭だった。 メジロが飛び立つと梅の花びらが落ちる。 淡い芳香に柔らかな声が入り混じった。 「一人でも大丈夫……って言ったけど、ちょっと怖くなちゃった」 桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357)の声だった。 花へと語りかけている。 暮木が足を止めた。 聞き覚えがあった。 ためらいがちに問いかける。 「病棟へはたどり着けた?」 萌愛が振り返った。 昨日の彼女は迷子だった。 装うつもりが本物になってしまったところで、暮木と看護師に出会った。 その時に手術のための2~3日の検査入院と告げてある。 「……ちょっと不安で……お花さんたちなら聞いてくれるから……」 ぽつりぽつりと語り始める。 貧血がひどいこと。 内臓に問題があるかもしれないこと。 両親は共働きなために一人で入院しているということ。 そして立ち上がろうとして、何かにつまづいた。 ずっ、と音が立つ。 「え」 「きゃあ! はわわ……ぶつからないで良かった……驚かせました? ごめんなさい」 「驚いたよ。 大丈夫か?」 ええ、と答えて萌愛は笑む。 暮木は肩に触れて彼女が無事なのを確かめ、頷いた。 「お兄さんと話したようで、不安、どこかへ行きました、ありがとうございます」 そう言って去る身軽な足音に「いや」と短く答え、花の落ちてくる方を向く。 見えない。 「むしろ俺の方が」 遅すぎる呟きに重なる音があった。 からり、という下駄履きの音。 仄かな匂い袋の香りと共に鳳蔵院・景瞬(破壊僧・d13056)が、やってきた。 彼はまず遠くへと案内を頼んで看護師を引き離している。 暮木を一人にさせた陰の功労者だった。 「おや、君は先程の!」 暮木が振り返る。 「……私は武道を齧っていたが腕をやってしまってな」 「それは……」 「だが、お蔭で見えなかったものが見えるようになった。 目に映るものが世界の全てではない、ということだな」 伏せたきりの目蓋の裏で眼球が動くのがわかる。 声はない。 景瞬が、おっと、と続ける。 「つい説教臭くなってしまったな、すまない!」 病院だけに僧服は身に着けていないが、僧とは説教するもの。 それを理解しない暮木は押し黙り、やがて、杖を頼りに歩き始める。 すれ違う瞬間、囁くほどの声でこう訊ねた。 「それを見続ければ、治さなくてもすむかな」 踏み込んだ下駄の勇気に跳ね返るどす黒い泥のようだった。 影が交わり、離れる。 保険の外交員と一悶着した後、暮木は中庭へと一歩踏み出した。 賑やかな声が聞こえて来る。 着ているわけではないのだが今はそれで良い。 当人の気も知らない子供たちは背中のジッパーを探したりと可愛くない。 雛美の目つきがやさぐれる。 「あーダルイわ」 本音がこぼれた。 その一部始終を背後で聞いていた暮木は咄嗟に口を押さえた。 横顔から険しさが消える。 「……っ、ぶ」 こらえたのだが、吹き出した音が微かに漏れた。 はっ、と振り返った雛美はフレンドリーに歩み寄る。 「やっほ~」 「やっ、いや、頑張らないで」 「……」 なんとなく戸口の段差に並んで座った。 「あぁ、疲れた。 どこか落ち着く場所はないかしら。 食堂のご飯おいしい?」 ラーメン美味しいよと子供たちの声。 暮木が首をひねる。 「俺は食ったことないけれど。 でも、落とし玉子だっていうからな」 かき玉じゃないと残念そうな顔をしてから訊ねた。 「仕事?」 「違うわ。 ボランティア」 無料奉仕。 なおさらきつかろう状況に眉根に力を込めて額を抱えた。 自分は治療費を喰らう者だ。 「なぜ……」 今度は雛美が首を傾けた。 「なに? かき玉ラーメンが好きなのかしら。 今度差し入れするわね。 約束」 その一言に、深く俯いた暮木の眉根がまた複雑に力を込めた。 目尻の雫が重さに負けたなら、もう笑い涙ではごまかせない。 ここは『またおいで下さい』を言ってはいけない場所。 重たい縁につぶれそうな肩にその『約束』の軽やかさは切なく儚い。 「ありがとう。 雛美さん。 ……暮木です」 杖を置いて右手を差し出した。 「俺は何を用意して待とう」 陽が傾く。 夕刻が訪れる。 静かに歩み寄ったのは煌理。 屋上への案内を暮木は彼女に求めていた。 手を取り、今、無明よりも深い闇へと踏み出す。 その卵は内側から貪られるようにして割れた。 ぼてりと地に落ちて膨れ上がったものは胸に亀裂の入った巨大な白い芋虫、蚕。 サイキックエナジーの大食漢、餓鬼のごとき幼生の誕生だった。 靱がすばやく声をかける。 安全な場所は調べてあった。 「危険です。 こちらへ」 駆け寄った景瞬と共に外階段への降り口に誘導しようとしたが、匂い袋の香りに気付いた瞬間、暮木は抗った。 「君、腕は」 猶予がない。 説明はともかく退避させる。 炯が外界との音のやり取りを断ったその時、ヴォッという異音が屋上に響いた。 無数の白く粘付く糸が灼滅者たちを覆い尽くそうと広がる。 「……ぅっ!」 巻かれ、阻まれ、敵との距離が開く。 糸が絡みついた箇所から嫌な匂いが立ち、冷たい痺れが広がり始めた。 退避に離れた者たちは無事だが、それ以外がまずい。 煌理が機械剣のごときクルセイドソードを抜いた。 祝福の文言を風に乗せ、振り払う。 ビハインドの祠神威・鉤爪は前へ。 スターゲイザーで足止めを狙った萌愛が、あ、という顔で唇を噛みマテリアルロッドを手にした。 (「ベヘリタスは逃がさない、ここで必ず消します!」) 駆け込み渾身で振るったロッドからフォースブレイクの魔力を注ぎ込むが、ぐんっと頭をもたげて退った芋虫は這い逃げようとする。 蓋を開けてみるまでわからなかったこの戦い、灼滅者側は総じると守りが固かった。 追うには攻撃力が足りない。 だが諦めない。 レインの声が響き渡る。 「その闇を、祓ってやろう」 WOKシールドを展開し、エネルギー障壁を大きく広げて味方を守る。 ビハインドのモトイは狙撃の位置へ。 (「貴様らは、総じて全てを奪いすぎだ。 容赦など知らぬよ」) 脇から回ったリコが敵の足許へと駆け込み、急所を狙う。 ザッという一撃。 リコの足許に飛び散るどす黒い体液。 「イ、イイィ!」 仮面の芋虫が不気味な声を上げた。 胸の一つ目が薄く開き始める。 倒れないのか。 反撃のきつさを考えると一度下がるしかなかった。 入れ替わって前へと出たのは雛美。 確実に当てることを大切にエアシューズを駆る。 床を黒く焼いた爪先がシャドウへと炎の一撃を蹴り込んだ。 「ギッ!!」 虫が怯む。 入った。 ずんっという重たい振動が灼滅者たちの許へと広がる。 ダークネスの洞にも似た口腔がボッと黒い球体を吐いた。 「っあ!」 食らったのは萌愛。 だが、持ち応えられた。 脇腹から焼け付くような毒の腐食が広がるが鈍い。 固く唇を噛んで耐える。 このままでは逃げられかねない。 炯の許からどす黒く殺気が生じて床を這い、敵を包み込もうとする。 (「絆を奪うとは残酷なことをしますね。 貴方の目的が何であれ、僕が今出来るのは一つだけ。 殺します。 えぇ、完膚なきまでに」) 身を揉んだシャドウが振り払って逃げる。 また、目蓋が上がった。 中で何かが蠢いている。 その時、退避を担った二人が戻って来た。 靱が形を変えた巨腕を構え、敵へと駆け込む。 鋭い一撃に風が巻いた。 「……!」 ザクリという音は響いたのに、巨大な虫は頭を持ち上げて彼と対峙する。 大口を開いた。 「ゴッ!」 何かがきらめいたと思った次の瞬間、靱の胸が引き裂ける。 顎から頬へと点々と熱い飛沫が迸った。 すかさず護符をはためかせるのは景瞬。 下駄の歯がガツンと固い音を立てる。 時間が過ぎる。 斬り込む者には短く、守る者には長い時間だ。 全身に細かな傷を刻んだシャドウが柵に背が付くところまで追い込まれる。 追いすがろうにも灼滅者側の足も赤黒い跡を引いて、今にも膝を突きかねない。 全員の意識がまだ残っていること自体が存在への粘り強さといえた。 「くっ!」 レインが地を蹴った。 妖の槍の穂先が闇を走る。 鋭く突き出した先で芋虫の目が大きく開いていた。 「オ……!!」 「……!」 白目などどこにもない。 真っ黒な眼球が灼滅者たちの姿をくっきりと映し、音もなく一つ瞬いて消えた。 耳をつんざくような金属音が響き渡る。 槍の先にあるのは大きく外へとひしゃげた柵だった。 シャドウはソウルボードへと逃げ去った。 静寂の中に灼滅者たちの荒い息遣いだけが残る。 カツリ、と杖の音。 彼らに向けられた望みはただ一つ。 生きていると声を上げることだった。 作者: 重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし.

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塗り薬or皮膚科?ダニに刺された時の症状と対策

君 の 腕 に 噛み 跡 つけ た あと

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極彩色の食卓

君 の 腕 に 噛み 跡 つけ た あと

載せます。 100首読むの、楽しかったです。 遂に歌のかたちとならず消えてゆきたり 82 尻 尻すぼみに終はらせて来し数章が風にめくれてばらばらと鳴る 83 股 夕闇の世界を股にかけてをりトレンチコートに顔埋めつつ 84 腿 太ももも桃のうちなり傷まないやうにくるんで運びませうね 85 脚(足) 客足の遠のいてゐた一角に突如出現する仏蘭西屋 86 膝 あるじまたは適度な塩気わたくしの裸の膝を舐めにくる犬 87 脛 冬いよよ白き脛かな明るみに出た談合の顛末を聞く 88 踵 第三の目を支給してもらふならうなじ辺りにあるいは踵 89 鱗 夏服にまだ着替えない 七月のあなたが隠し続くる鱗 90 尾 最後尾は二万年待ち 謁見の叶はぬままに幾世代経ぬ 91 静脈 静脈を通過していくかなしみを皮膚の上からなぞつて遊ぶ 92 動脈 つま先の細動脈の脈々とうたひつづけよ荒海のうた 93 蛋白 バランス良く蛋白質を摂るために今週二人目の白身魚(うを) 94 腺 からうじて強気な人よ 西風はうたふ涙腺上のアリアを 95 垢 広場にてお待ちしてます際立つて垢抜けてないのがわたしです 96 液 三男は出かけつぱなしこの夏も樹液舐め舐め林の奥へ 97 脂 樹脂の町あるべし夏の陽を浴びて空へ溶け出す飴色の屋根 98 腱 易々と追ひ抜かされて下り道アキレス腱のあたりが痛し 99 分泌 (分泌中)あなたのむねに (分泌中)いつぱい (分泌中)のゆきむし 100 体 身体少し傾けながらアーケードゲームに消ゆるたくさんの星 なお、「腰元佐吉」は尊敬する翻訳家岸本佐知子さんの ミクシィネームです。 しるさん、ほんと、よかったですよおー。 特に好きだったお歌を20首あげさせてくださいね。 (題は省略) * しるさんのこの歌が特にスキです20首選 BY しま2007 泣きながら掻き分けてをり恋人の髪につむじが見当たらなくて 止まらないソフトクリーム機の前で(脳やはらかし)ひどく慌てる 君の残す全てが手がかりのやうで落ち着け、これはただの指紋だ 眉間ぱっくり割れて中から溜め込んでゐた悲しみがしたたり落ちる ゆれぬるいもろいいらいら 微熱時の皮膚感覚をそのまま書くと 鼻水はいづこより湧く真夜中のユーフラテスに石投げに行く 気管支に降る雨の音ぜえぜえとあなたは笑ひ転げてゐたり 防空ごうの前に三時ね 手のひらに明日の予定をマジックで書く 背もたれにもたれかからず書いてゐる上半身を覚えてゐたり 胃に開けた穴から伸びておずおずとツルハマナスは虚空を目指す ひたひたとたゆたひながら迫りくる豆乳プリン大いなる肩 笑はずに頷いてゐてくれたこと つくし・さわらび・わたしの背伸び 風ゆるきこの夜(よ)単性生殖の子どもの群れが火影をよぎる 卵巣は星の固まりしやらしやらと遊んで待たむ風が吹くまで あるじまたは適度な塩気わたくしの裸の膝を舐めにくる犬 夏服にまだ着替えない 七月のあなたが隠し続くる鱗 静脈を通過していくかなしみを皮膚の上からなぞつて遊ぶ からうじて強気な人よ 西風はうたふ涙腺上のアリアを (分泌中)あなたのむねに (分泌中)いつぱい (分泌中)のゆきむし 身体少し傾けながらアーケードゲームに消ゆるたくさんの星 何とか100までたどり着くことができました。 楽しみをいただいた、しま2007さんに感謝します。 ありがとうございました。 1 つむじ つぎつぎに斜め四十五度下に立つ人たちのつむじを押さむ 2 頭 鶏頭を愛すひとあらばあはれなり慎ましきさま西日のひかり 3 脳 認めるも認めないとも争わぬ電脳世界の住人われは 4 脊 脊柱のごとき気概を持つひとはひとりで反省しているだろう 5 髄 「髄液を吸うほど好き」と言いし子のそのかたはらに人形ありき 6 髪 白髪を黒く染めたる親のさまともに変化す子どもの姿 7 毛 繊毛を摘み取るごときあがきなり評さるるわが発表結果は 8 額 額に咲く「肉」の一文字見ておれば今宵会う人酔人なりき 9 皮膚 あの雨の向こうに現在が横たはり戻れなくとも皮膚はやさしい 10 膜 絶縁を告げられた夜電話機の薄き油膜に顔を映して 11 臓(器) 臓器はすなはち我を包むものやさしさこわさおそれかなしみ *臓器=オルガン 12 神経 神経間電気信号連絡し蘇れ絶縁の記憶 *神経=シナプス 13 指紋 秋刀魚たち打ち上げられて食されぬ残され給ふ神の指紋は 14 顔 弥生顔縄文顔と争ひき高校三年われの乙女と 15 頬 巫女の頬へ夕日そそがれ始むとき境内のひと少なくなりぬ 16 骨 白骨となった蛙を抱えてた 放り投げたらばらばらになる 17 肉 「美でなきは肉塊である」と告ぐときにモーパッサンが咥えた葉巻 18 眉 白眉とは頭のよさを意味しない生きる強さをベジータとして 19 睫毛 会うひとに「睫毛がない」と言はれおり「ない」のではなく「長い」のだった 20 感覚 阻まれて貫き通すこともなく必要ないか道理の感覚 21 耳 真夜中に耳炎となりし幼子の痛みのようなこのせつなさは 22 目(眼) 公園の幼らを見るこんなにも目立ちたがり屋ばかり揃って 23 瞳 黒板のうえにチョークを立てていた悪戯っぽく瞳合わして 24 涙 ひさかたの光あふれるキャンパスで浪人生が流す涙は 25 まぶた 白梅がきみのまぶたにかかるとき不忍池へそそぐきんいろ 26 鼻 はつふゆの漁師町にて大根干す禅智内供の鼻のごとしも 27 ほくろ こんなにも瞬いているオリオンのなかに三つのお空のほくろ 28 髭 髭のないダリが横ぎる想像をしながら歩く銀座の歩道 29 唇 商談の前にリップクリームを塗るとこひとに見られ気まずい 30 口 はつなつの蛇口にホースつないでるサッカー部員「逃げろ、きみたち」 31 歯 叔母の歯を見つめ続けて聞いてをり出生話そしてこれから 32 舌 湯気のなか垂直飛びを極めつつ白くなりたる牛舌ひとつ 33 唾液 唾液すら出なくなるときこんなにも焦がれる想いはしたくないから 34 顎 顎関節外れるほどのキスをして彼ら地底へ消えて行きたり 35 関節 人ごとに違う関節言葉とは最後に皆をつなぎ合わせて 36 うなじ 艶やかなうなじを覆う偽物の髪が世界を救う妄想 37 首 階を夕日とともに登り来る斬首ののちの彼の瞳は 38 呼吸 五分後に審問されるドア前へ不安は消えぬ呼吸ひとつで 39 喉 隼が喉を鳴らして弧を描く空に近づけ壁面登って 40 管 五七五放り投げたり丸めたり信管つけて夜空へ放て 41 肺 肺胞のひとつひとつが瞬いてツリー見あげる幼らふたり 42 肩 壁面へ鋲打ちつけて引くザイル肩甲骨へくいこむザック 43 腋(脇) 脇抜けて社殿の前で鳴きやみぬ猫の真面目さそのしなやかさ 44 運動 運動会絶対一番最後尾運動音痴忍耐抜群 45 筋 横たはる祖父の眉間の筋ひとつシベリアの地の日々を思へよ 46 腕(手) 腕相撲しきりにせがむ子どもたち向かっておいで壁になるから 47 肘 肘ついて頬を覆いし手に浮かぶ静脈に見る彼の歳月 48 掌 掌りっしんべんをなぞり書き部首を教へる霜月の夜 *掌=たなごころ 49 指 指立てる仕草を互いにする君よふざけることには一線ありき 50 上半身 上半身のみの老婆がテケテケと高速できみ追い来る話 51 胴 胴離し遺棄する事案件数は過去百数十件一割肉親 52 心臓 心臓に杭打つごとの衝撃よ祖父との血縁関係知った日 53 肋 肋骨を一本取れば取る者も取られる者も朝焼けのなか 54 循環 「この数字、循環してる」と言う彼のつぶやき(しばし)春は近いね 55 血 流血の騒ぎをよそに書式打つ(冷静さとは)とても哀しい 56 胸 「胸肉はパサパサするから腿肉のほうが好きだ」と言うジョン・ボイド 57 消化 消化できず胸に残ってるのでなく消化せずにいるのだ きっと 58 食道 食道の先へ続ける煉瓦道「とまれ」の文字は闇に浮遊す 59 胃 こんなにも世界すべてを胃に落とし交響曲はうねり続いて 60 腸 腸炎となりたる夜に彼は泣くどこまで行けばよいのだろうと 61 肝 そうやって肝心かなめのものたちがなくなっていく 北の方から 62 胆 魂胆を見抜いていても見抜けないふりして今日も騙されてをり 63 膵島(ランゲルハンス島) 膵島の三つの星が見たければランゲルハウス博士に会うべし 64 乳 「牛乳に相談しようそうしよう」風に揺れてる中吊り広告 65 腹 割腹したる者たちの影感じ参道ほどの哀しみを負ふ 66 へそ 「へそ」と叫べるオーストラリア人が優しいこころ取り戻す場所 67 背 もう空が白みはじめてゆく窓の前眺めてる山の背肌を 68 腰 江ノ島ゆ腰越状を訪ね来て彫り襖観て こんなにも華 69 羽 蜻蛉飛ぶ橋の真中にひとり立つ石狩川へ落ちてゆけ 羽 *蜻蛉=あきつ 真中=もなか 70 子宮 陽溜まりに乱反射する水たまり(子宮のなかはこうかもしれない) 71 肛門 夕されば食事時間に流される肛門薬の商魂を観よ 72 陰茎 陰茎を祀る社はあはれなり二万余年の歳月を越え 73 陰核 陰核を祀る社もあはれなり五穀豊穣祈りは続き 74 膣 膣模型理科準備室で眠ってるビニール袋かけられて まだ 75 生殖 生殖へ介入するかしないかを議論している会議室の現在 76 精巣 いたるところ精巣ありきつぎつぎに格納される愛国心は 77 卵巣 卵巣の話を聞けば顔赤くなるようなこの津軽りんごは 78 腎(臓) 腎臓のために余生を病院で過ごしし伯母の赤いがま口 79 尿 はつなつに尿取りパット換えたとき祖父が洩らした弱音せつなし 80 汗 浅草の国際通り沿いにある成吉思汗屋今日こそ行かむ *成吉思汗=ジンギスカン 81 爪 大空の碧いひかりに答えてたあの中庭の付け爪はいま 82 尻 奥尻へ渡るフェリーの乗客の雲丹と地震ばかりの話題 83 股 猿股のままで出てくる老人が歳暮の包み開ければ つらら 84 腿 重力が腿に懸かるの意識して下界を見れば一面の雲 85 脚(足) 飛脚マーク消えかかったトラック高速道路そばで眠っていた 86 膝 食堂の主人に車当てられて膝を冷やせとジュース二本で 87 脛 しがみつき脛の太さを感じてたあの頃はまだ無邪気だったね 88 踵 消えるまで見つめ続けるその背中踵返して歩き出せない 89 鱗 つぎつぎに鱗片葉の言葉起きマトリョーシカも勝てないだろう 90 尾 彗星76年ごとに来て尾を道連れに2061年 *彗星=ほうきぼし 91 静脈 さくらばな舞い散るベンチそばで見たきみの手の甲 薄い静脈 92 動脈 環状線都市動脈路立体化工事断念渋滞継続 93 蛋白 微蛋白検出機械発送日伝票決済局長不在 94 腺 汗腺のすべてを塞げ塞がればインドカレーを難なく食べて 95 垢 薄汚れ手垢だらけの『氷点』を残して逝ってしまった祖父は 96 液 液体ソープ手にとり泡立てている(公暁は本当に殺したのか) 97 脂 本当に存在するなら見てみたいモーパッサンの脂肪の塊 98 腱 突然に腱を伸ばした子のために厚紙を切る即席ギプス 99 分泌 思春期が分泌している残り香がまだ中二階に留まっていて 100 体 少しだけ体暖め分け合えば百首の壁も越えられるかな たかみさん、おつかれさまでした! では、たかみさんのお歌で わたしがいいなー、と思ったもの20首あげさせてくださいね。 たかみさんのこの歌いいな、20首 byしま2007 つぎつぎに斜め四十五度下に立つ人たちのつむじを押さむ 額に咲く「肉」の一文字見ておれば今宵会う人酔人なりき あの雨の向こうに現在が横たはり戻れなくとも皮膚はやさしい 絶縁を告げられた夜電話機の薄き油膜に顔を映して 弥生顔縄文顔と争ひき高校三年われの乙女と 白梅がきみのまぶたにかかるとき不忍池へそそぐきんいろ 髭のないダリが横ぎる想像をしながら歩く銀座の歩道 人ごとに違う関節言葉とは最後に皆をつなぎ合わせて 横たはる祖父の眉間の筋ひとつシベリアの地の日々を思へよ 腕相撲しきりにせがむ子どもたち向かっておいで壁になるから 「この数字、循環してる」と言う彼のつぶやき(しばし)春は近いね そうやって肝心かなめのものたちがなくなっていく 北の方から 「牛乳に相談しようそうしよう」風に揺れてる中吊り広告 もう空が白みはじめてゆく窓の前眺めてる山の背肌を 蜻蛉飛ぶ橋の真中にひとり立つ石狩川へ落ちてゆけ 羽 *蜻蛉=あきつ 真中=もなか 陰核を祀る社もあはれなり五穀豊穣祈りは続き いたるところ精巣ありきつぎつぎに格納される愛国心は さくらばな舞い散るベンチそばで見たきみの手の甲 薄い静脈 汗腺のすべてを塞げ塞がればインドカレーを難なく食べて 液体ソープ手にとり泡立てている(公暁は本当に殺したのか) わあ、初雁様、ありがとうございます。 そして、しま2007さん 20首選ありがとうございますー。 たかみさんのからだから短歌、今直感で選んだマイフェイバリット20。 脊柱のごとき気概を持つひとはひとりで反省しているだろう 絶縁を告げられた夜電話機の薄き油膜に顔を映して 真夜中に耳炎となりし幼子の痛みのようなこのせつなさは 公園の幼らを見るこんなにも目立ちたがり屋ばかり揃って 髭のないダリが横ぎる想像をしながら歩く銀座の歩道 はつなつの蛇口にホースつないでるサッカー部員「逃げろ、きみたち」 階を夕日とともに登り来る斬首ののちの彼の瞳は 運動会絶対一番最後尾運動音痴忍耐抜群 腕相撲しきりにせがむ子どもたち向かっておいで壁になるから 上半身のみの老婆がテケテケと高速できみ追い来る話 胴離し遺棄する事案件数は過去百数十件一割肉親 流血の騒ぎをよそに書式打つ(冷静さとは)とても哀しい そうやって肝心かなめのものたちがなくなっていく 北の方から 蜻蛉飛ぶ橋の真中にひとり立つ石狩川へ落ちてゆけ 羽 *蜻蛉=あきつ 真中=もなか 陽溜まりに乱反射する水たまり(子宮のなかはこうかもしれない) 卵巣の話を聞けば顔赤くなるようなこの津軽りんごは 腎臓のために余生を病院で過ごしし伯母の赤いがま口 猿股のままで出てくる老人が歳暮の包み開ければ つらら 食堂の主人に車当てられて膝を冷やせとジュース二本で 液体ソープ手にとり泡立てている(公暁は本当に殺したのか) あと、「神経」の歌は、初出時よりずっとわかりやすくなったと 思いました。 楽しませてくださってありがとう。 しま2007さん、しるさん、20首選をありがとうございました。 選んでいただいて、とても感動しました。 では、しるさんの歌で好きな歌20首を。 泣きながら掻き分けてをり恋人の髪につむじが見当たらなくて 脊椎はしなるよ青い空のした不安などないふあんなどない かわいいと誰にも褒められぬことの骨の髄まで染みて夕映え 顔かたちに見覚えがあるこの人は昨日(さくじつ)のわたしに相違ない 眉間ぱっくり割れて中から溜め込んでゐた悲しみがしたたり落ちる 舶来の香水壜のふたを取り流さなかつた涙をしまふ 話すときまぶた静かにふるはせるこの人を信じることにする 唇だけまだ生きてゐて千年も昔の愛の言葉を放つ 言ふことを聞かぬ関節 折れ曲がり優しき人へ走らむとする この池のめだかに触れて死んでつた妹たちの透明な指 すれ違ふとき微笑めり柔らかき子宮を持つてゐさうな男 卵巣は星の固まりしやらしやらと遊んで待たむ風が吹くまで 肝腎のタカコが一時間遅れ皆盛大にぶうたれてゐた 夏服にまだ着替えない 七月のあなたが隠し続くる鱗 最後尾は二万年待ち 謁見の叶はぬままに幾世代経ぬ 静脈を通過していくかなしみを皮膚の上からなぞつて遊ぶ からうじて強気な人よ 西風はうたふ涙腺上のアリアを 広場にてお待ちしてます際立つて垢抜けてないのがわたしです 樹脂の町あるべし夏の陽を浴びて空へ溶け出す飴色の屋根 (分泌中)あなたのむねに (分泌中)いつぱい (分泌中)のゆきむし ひとに対する観察眼が、すごいなとおもいました。 ひとを対象としている歌が多いですね。 楽しみをくださって、ありがとう。 しるさんの面白い歌 6 髪 前髪は責任を取れ後頭部一同はしらばつくれなさい 13 指紋 君の残す全てが手がかりのやうで落ち着け、これはただの指紋だ 15 頬 チョコレートで汚した頬を見せにくる柔らかき生きものを抱きとる 17 肉 なんとまあ重い肉塊 ひきずつて冬の休日診療所まで 19 睫毛 人間のふり難儀なり帰りきて睫毛一本一本はずす 39 喉 ずるずると這ひまはるものの気配あり矢野耳鼻咽喉科の暗がりに 41 肺 沈む船の甲板に立ち役立たずにして輝かしい肺呼吸 45 筋 筋肉質の男でなくて助かつた古新聞の上でばらして 51 胴 救命胴衣ぶくぶく膨れああこれで社員全員助かりますね 55 血 わたしの血少し舐めたい?一月の石油ストーブには覗き窓 56 胸 つまらない胸でごめんね 登山靴無くても行ける枯れ芝の丘 75 生殖 風ゆるきこの夜(よ)単性生殖の子どもの群れが火影をよぎる 76 精巣 精巣は風の固まり出窓から星が見えたらはるかな旅へ 77 卵巣 卵巣は星の固まりしやらしやらと遊んで待たむ風が吹くまで 91 静脈 静脈を通過していくかなしみを皮膚の上からなぞつて遊ぶ 99 分泌 (分泌中)あなたのむねに (分泌中)いつぱい (分泌中)のゆきむし 99の三行分かち書きの試みもほお〜と見とれました。 たかみさんの面白い歌 9 皮膚 あの雨の向こうに現在が横たはり戻れなくとも皮膚はやさしい 10 膜 絶縁を告げられた夜電話機の薄き油膜に顔を映して 11 臓(器) 臓器はすなはち我を包むものやさしさこわさおそれかなしみ *臓器=オルガン 17 肉 「美でなきは肉塊である」と告ぐときにモーパッサンが咥えた葉巻 22 目(眼) 公園の幼らを見るこんなにも目立ちたがり屋ばかり揃って 26 鼻 はつふゆの漁師町にて大根干す禅智内供の鼻のごとしも 40 管 五七五放り投げたり丸めたり信管つけて夜空へ放て 41 肺 肺胞のひとつひとつが瞬いてツリー見あげる幼らふたり 46 腕(手) 腕相撲しきりにせがむ子どもたち向かっておいで壁になるから 50 上半身 上半身のみの老婆がテケテケと高速できみ追い来る話 57 消化 消化できず胸に残ってるのでなく消化せずにいるのだ きっと 58 食道 食道の先へ続ける煉瓦道「とまれ」の文字は闇に浮遊す 59 胃 こんなにも世界すべてを胃に落とし交響曲はうねり続いて 61 肝 そうやって肝心かなめのものたちがなくなっていく 北の方から 70 子宮 陽溜まりに乱反射する水たまり(子宮のなかはこうかもしれない) 74 膣 膣模型理科準備室で眠ってるビニール袋かけられて まだ 78 腎(臓) 腎臓のために余生を病院で過ごしし伯母の赤いがま口 83 股 猿股のままで出てくる老人が歳暮の包み開ければ つらら 88 踵 消えるまで見つめ続けるその背中踵返して歩き出せない 96 液 液体ソープ手にとり泡立てている(公暁は本当に殺したのか) 99 分泌 思春期が分泌している残り香がまだ中二階に留まっていて 面白いと言ったら失礼なほど、切ないものがあります。 終えました。 アップします。 しまさん、面白い企画をありがとうございました。 ブログは誰でも公開ですが、貼ります! 楽しかったです、自分の体を見つめなおす時間にもなりました。 jugem. つむじ つむじから煙になって消えてゆく思い出話に花は咲かない 2. 頭 頭痛薬痛みだす前に飲んでねと渡されたのは無茶な約束 3. 脳 疲れてる脳味噌ちゃんにマッサージもしてやれない非力なわたし 4. 脊 脊椎のひとつひとつを積み上げて崩すスリルよ人体ジェンガ 5. 髄 六歳で死ぬはずだった髄膜炎検査の前に逃げ出したけど 6. 髪 誰だって受け入れたいの無造作に乱した髪で携帯を打つ 7. 毛 毛沢東なのに無毛と笑ってたガイドは北京でまだ生きてるよ 8. 額 誰一人気付いてないね額から青い光が漏れだしている 9. 皮膚 ほんとうは皮膚呼吸する生き物に生まれたかった(プールが嫌い) 10. 膜 ほっとけばくっつくよって云われても縫い合わせずにいられない膜 11. 臓(器) 内臓を見たいのならば責任を持って癒せる人間になれ 12. 神経 身体の神様を失くしたわけか自律神経失調症は 13. 指紋 指紋では「認証不能」世間から認められないきみが大好き 14. 顔 はじめての望遠鏡で見たものは名前を持たない顔、顔、顔、 15. 頬 逃げ出すよチークダンスの時間にはナイキに履き替えるシンデレラ 16. 骨 この骨はカルシウムだからすぐ折れる早くチタンに交換してよ 17. 肉 肉と骨あるいは殻のいずれかを鍛えるならば、あなたはどれを? 18. 眉 金髪に黒い眉毛が懐かしい田んぼのほとりに佇むヤンキー 19. 睫毛 冬が来て枯れ葉とともに散る睫また芽吹くまで眠って待とう 20. 感覚 むっつめの感覚器官探してた大人になったいまはもう無理 21. 耳 前世は捨て歩切られた耳たぶを塩漬けされたかなしい兵士 22. 目(眼) 憧れるタイプの男「眼球が限りなく球体に近いひと」 23. 瞳 瞳ちゃん元気かなあって人の目を見て話す時つい思い出す 24. 涙 涸れるほど涙流したその後はポカリを飲んでスッキリ補給 25. まぶた 見たくないものは見なくて済むように心とセットのギフト、瞼。 鼻 ここを出たあなたは二度と帰らない東に向けて贈るはなむけ 27. ほくろ 知らぬうち腹に生まれたほくろには見覚えがある母の腹にも 28. 髭 父親のひげ剃りに触れ傷付けた指先の血が汚れて見えた 29. 唇 唇で口を塞いでやりこめる君の手段はもううんざりよ 30. 40 管 今日飲んだジャスミンティーは特別に三半規管を満たすでしょう 41 肺 忘れない肺で呼吸をしてた日々湿った風を吸ってた日々を 42 肩 狂犬と呼ばれた強肩あの人が今も野球をしてますように 43 腋(脇) 腋の毛を抜いて処理する 収穫の歓びに似た初夏の訪れ 44 運動 土曜午後私は歌う彼のいる運動場は聖域だった 45 筋 居酒屋の割箸でほぐす筋繊維私のからだに貢献しなさい 46 腕(手) 夜明けまで腕枕さえ続かない二人の関係 ま、それもありか。 47 肘 日焼けして乾いた肘が物語る海辺に生きた女の一生 48 掌 てのひらを合わせて祈る子どもらよきみの信じるかみさまはどこ? 49 指 どうしても私が欲しいというのならまずは小指を奪ってごらん 50 上半身 男とも女とも知れぬトルソーに恋をしたのは透明な性 51 胴 顔じゃない!だるま落としの不様さに胴の長さの大切さ知る 52 心臓 「近所でね、一家殺害事件がね」神社の屋台でハツ喰ひながら。 53 肋 「勝つためにゃアバラのひとつふたつなど」…アバラが折れて死ぬ人いるよ。 54 循環 オーラとか気とかとにかく感じてよいま体中循環してる 55 血 慰めに打ちつけた釘抜いたけど血止めの仕方聞いてなかった 56 胸 先生は内科医なのに胸音を確かめようとしたことないね 57 消化 腹に棲む消化担当 虫 わたしのぶんも残して下さい 58 食道 いざゆかん奪われた彼を取り戻せ待ち受けるのはクジラの食道 59 胃 このからだいずれは君に与えると約束し胃にアロワナを飼う 60 腸 まじかいな腸捻転とちゃうなんておまえごっつう痛がっとったし 61. 肝 肝臓を食べてね死んだ後でまで君を探して迷いたくない 62. 胆 熊の胆ライオンの胆武士の胆勇無き君に与ふプラセボ 63. 膵島(ランゲルハンス島) 穏やかなランゲルハンス島ならば何も叫ばず沈むのだろう 64. 乳 (今更に色恋を詠めといわれても)退化した乳が囁いている 65. 腹 静まれば君の腹から声がするさあ潮時ささよならしよう 66. へそ へその緒は今もへそから伸びてます 距離にして約1500km 67. 背 背を向けて彼は煙草に火を点けるわたしの孤独も静かに燃える 68. 腰 やはらかきベッドと腰のあひだには意志では勝てぬしぶとき絆 69. 羽 黒髪はいつか羽毛にはえ代わり小さき踊り子白鳥になる 70. 73 陰核 快楽の女神はここにましませりひとの手触れぬクリトリスひとり 74 膣 破れども破れどもまだ処女である天罰はこの血塗れの膣 75 生殖 友の死に生殖本能目覚める夜思い出を交わすようなセックス 76 精巣 射精後の玉の軽さに遺伝子と人生と性の軽さを思う 77 卵巣 交われば君にも少しわかるでしょう?卵巣に棲む母蜘蛛の匂い 78 腎(臓) アダム立つ世界の七日目腎臓はメンバーの増員を求めた 79 尿 いるものといらないものをはきちがえ吐き出された尿検査の数値 80 汗 嬌声に優しく沁みる分泌物情事のあとのポカリスウェット 81 爪 この爪は生き残るには弱すぎて今日も一匹の餌も喰えない 82 尻 アメリカで銃殺された19歳男子の尻が晒された日本 83 股 海王の三叉の矛はニッポンの農家の納屋に隠されている 84 腿 内腿も見せるねすごく良い色に染まっているから、ほら開くよ。 85 脚(足) テーブルの下でこっそり絡ませて誘う脚を間違えただけです 86 膝 膝裏が弱いのでもね本当は膝頭の心が弱いのよ 87 脛 たぷたぷと揺れるふくらはぎ切り割いて新時代の神が生まれる 88 踵 あきらめの悪い女はかかと削ぎ、得たのは更に深まる憎悪 89 鱗 鱗粉を喉に詰め死にいたる夢世界を満たす蝶々の群れ 90 尾 もし奴がしっぽをだしたら必ずや引きちぎりなさい生きるためにね 91 静脈 白い胸透けて浮かんだ静脈を東京メトロになぞらえる夜話 92 動脈 泣かないと決めたらあとは簡単で、肺動脈に楔打つだけ 93 蛋白 新しい蛋白質の発見を歓んでこの身に迎えよう 94 腺 冷静を気取ってる人すべて内分泌腺から涙流すよ 95 垢 脱ぐまでは私の一部だった垢ごみとして消ゆ愛してたのに 96 液 月々に私を満たし溢れ出る液体よさあ地を汚染せよ 97 脂 「死後は、この腹の周りの脂など石油の代わりにつかって下さい」 98 腱 ピンと張るアキレス腱に目がいってなんていうの怖いもの見たさで 99 分泌 球体にやさしく満ちて風となる天女が分泌するネクタール 100 体 健全な精神とは何だったのか? 心と体、一つになれた? さて、これからゆっくり皆さんの作品も拝見したいです。 微生物に液化されをり鞄の中に 97 脂 背脂と蔑 なみ されしひと皇統の歴史の裏にうづもれゆかな 98 腱 神殿に礼せるひとのアキレウス腱と呼ばれる彫の翳りや 99 分泌 内分泌外来すでに三時間いらちを抑へいらちを殺し 100 体 全宇宙を呑み込む瞑さ きぬづれて女体ゆるらかに開かれてゆく こんにちは。 初雁です。 気が抜けたビールのように今頃になってまとめ終わりました。 遅くなりましてごめんなさい。 内容も詩にはほど遠いストレートな表現で詠い終えてしまいました。 長い時間が流れましたが、とても楽しい試みでした。 肉体のテーマはいいですね。 ありがとうございました。 やっと終わりました! 途中で短歌が全く作れなくなってしまって大変でした。 2年もかかってる…長かったぁ〜。 1 つむじ 渦を巻くつむじが二つある君はきっと将来大物になる 2 頭 小さくて子供の帽子が入るぐらいそんな頭でモノ考える 3 脳 左脳派か右脳派かなんてわからない感覚だけで生きているから 4 脊 骨がある私も脊椎動物ね気持ちはとても柔らかいのに 5 髄 骨髄の移植を終えた少女には中学に行く夢があったの 6 髪 ひたすらに髪の毛伸ばし君誘う思わず触りたくなるように 7 毛 体から離れた途端汚くて指先でつまむ一本の毛を 8 額 母が言う「前髪上げて、おでこ出し。 見通しよくして、笑顔で歩け」 9 皮膚 泣いている私の皮膚は度々の私の爪のひっかき傷に 10 膜 透けているこんなに薄い膜なのに私と貴方を確かに隔てる 21 耳 弱いからいじらないでね耳たぶは そう言う君に甘噛みをする 22 目(眼) どこまでもお見通しだと君の目は黙して語る 少し怖いの 23 瞳 きらきらと光る子供の瞳には未知の世界を見せてやりたい 24 涙 涙したその数知れず今日もまた玉葱の陰で私は泣いた 25 まぶた ぼんやりとまぶたの裏に現れし初恋の君名は何という 26 鼻 これからの季節は辛い花粉症鼻をもぎ取り洗いたくなる 27 ほくろ お互いに知らないとこにあるんだね私のほくろ貴方のほくろ 28 髭 鏡越ししかめ面して髭をそるそんな仕草に男感じる 29 唇 こっそりと下唇の厚さ見て情の深さを探ることあり 30 口 新作の料理はいつも気を遣う貴方の口に合うといいけど 31 歯 歯立てると貴方が睨むじゃぁ次は甘く噛むから許してくれる? 32 舌 ちろちろと紅い舌先蠢かし上目遣いで貴方に笑う 33 唾液 キスしたら唾液に絡むヤニ臭さ だから嫌なの煙草を止めて 34 顎 気になるのビッグマックが でもきっと私の顎は外れてしまうね 35 関節 立ち上がるだけであちこち軋むから関節さする若年寄か 36 うなじ 後れ毛の垂れるうなじを見せ付けて僕を誘(いざな)う湯上りの君 37 首 首筋にきつく吸い付き赤い跡実は私は吸血鬼なの 38 呼吸 君となら阿吽の呼吸いつだって夫婦漫才始められるわ 39 喉 喉飴をいつも鞄に入れておき声嗄れるまで働きたいの 40 管 ぽたぽたと雫の伝う管を見て何も出来ずにただ項垂れる 41 肺 中高でクラリネットを吹いたから肺活量には自信があるの 42 肩 肩寄せていつも二人でいたいから何も言わずに貴方を待つわ 43 腋(脇) 脇の下弱いと知っているくせに執拗にそこを攻めてくるのね 44 運動 たまにはね運動しなきゃと思いつつ音痴だからとつい言い訳を 45 筋 少しだけスポッチャ行っただけなのに筋を痛めたみたいで辛い 46 腕(手) 居酒屋の帰り貴方と腕を組む自然と笑みがこぼれ出てくる 47 肘 友達に私の失敗話す君これでも食らえ肘鉄の刑 48 掌 掌に刻まれし線なぞりつつ君は瞑想静かなるかな 49 指 武骨でも貴方の指が愛しくてそっと唇含んでみたい 50 上半身 反り返る上半身を押さえつけ貴方は吼える吾(あ)を組み敷いて 一度にアップできなかったので、半分ずつにしました。 51 胴 胴回りつかまないでねぷにぷにのお肉がでんと座っているから 52 心臓 幼き日受けた傷跡心臓が時折疼く呼吸が止まる 53 肋 笑いすぎ肋骨辺りが引きつってそれでも笑うお腹押さえて 54 循環 貴方から貰った言葉私から送った言葉循環してく 55 血 赤黒い血を見るだけで怖いからサスペンスものは見れないんです 56 胸 胸元の見えそで見えぬ服を着て貴方の視線をそこに釘付け 57 消化 私の消化機能に呆れますお肉お魚何でもござれ 58 食道 じんわりと伝わる感覚反芻し冷たいものが今 食道を 59 胃 胃の奥がきりりと痛む緊張で長引く会議尾を引く辛さ 60 腸 毎朝のヨーグルトさんお願いよビフィズス菌で腸を助けて 61 肝 肝心なことは聞けずに後回しいつものことと自分を哂う 62 胆 決断をする胆機能低下して我は不眠や鬱になりしか 63 膵島(ランゲルハンス島) 長崎の出島を三つ合わせたらランゲルハンス島に似ている 64 乳 「垂乳根の母」の意味聞き驚いて子らは笑えり恥ずかしそうに 65 腹 昔から寝相が悪く呆れられ今でも下す腹を恨まん 66 へそ 木箱にて母がしまえるへその緒を一度でいいからこの眼で見たい 67 背 君の背に見えぬ苦労と責任を感じて何も言えなくなった 68 腰 腰に手をあててコーヒー牛乳を湯上りの君子供のようで 69 羽 羽無くし飛び方さえも忘れつつ空を見るたび手をのばしてる 70 子宮 ゆりかごに眠る子のため準備する静かに痛む子宮感じて 71 肛門 呻いては要らぬものみな捻り出す肛門それは見えないけれど 72 陰茎 陰茎は花のない花 茎だけで剥き出しの愛訴えている 73 陰核 隠された核爆弾のスイッチに似た陰核は女の要 74 膣 膣壁をぐるりと撫でて慈しみもう少し奥へ貴方は進む 75 生殖 生殖のためだけに吾(あ)を抱くのなら愛はいらない恋もいらない 76 精巣 一億の希望宿して出発し精巣工場佇んでいる 77 卵巣 ただ一つ貴方を待つの卵巣は孵らぬ卵涙にかえて 78 腎(臓) 祖父はただ酒と仕事に溺れてた 腎臓の悲鳴聞こえていても 79 尿 足あげて尿する犬は勇ましや己の証ひたすら残す 80 汗 うっすらと汗ばむ体しなやかに私の瞳捉えたままで 81 爪 ほの赤き爪にはかれぬ力こめ君は吾(あ)の指握り締めおり 82 尻 吾の歳を尻上がりにて問う子らよその差はどうにも縮まらぬもの 83 股 天までも続く階段のぞき見る股の間で歓声あげる 84 腿 腿肉を量り売ったらこの体全部で幾ら値段がつくの 85 脚(足) 足首を掴まれ高く上げられて閉じた瞼の裏で君笑む 86 膝 生意気な口を利く子に「膝蹴りを喰らいたいの?」と蛇の眼で問う 87 脛 浴槽に腰掛け背中丸めてる脛を優しく撫でる女よ 88 踵 高く跳ぶ踵を強く蹴り上げてあぁおちていくただしなやかに 89 鱗 一枚ずつ鱗はがしていくように貴方を知って好きになりたい 90 尾 白き背の終わりにあるは尾の跡か貴方はなぞる細い指先 91 静脈 うっすらと手首に浮かぶ静脈は歯の筋のよにそこに確かに 92 動脈 動脈の力強さを指裏ではかりつつ目を閉じ数を数えてる 93 蛋白 ダイエット中も蛋白質は忘れずに健康的に痩せて綺麗に 94 腺 見えねども甲状腺の管理下に私は支配されているのだ 95 垢 銭湯で一度垢すり受けたいないつも勇気が出ずに素通り 96 液 貴方から出る液体を貴方ごと私は愛す明日を見ずに 97 脂 いつの日も脂ののった若者のつもりでいたい老いていけども 98 腱 存在がアキレス腱になるならば貴方の前から私は消えよう 99 分泌 知らぬ間に分泌されるものにより私は生きる生かされている 100 体 手のひらで体温掴み物言わず貴方の背中だけ見ておりぬ.

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